複数店舗で人材を集めると、媒体費も運用工数も際限なく膨らみがち。にもかかわらず応募の“質”は安定しない——その根本原因は、配信が“広く浅く”の一斉発信に偏り、候補者の属性に合っていないからです。
本稿では、上場企業の介護事業者がLINE公式アカウント+拡張ツールで「エリア×職種」をセグメント配信し、無駄打ちを削って適合応募を増やした設計を分解します。専門用語は簡潔に解説し、今日から実装できるチェックリストとテンプレも添えました。
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1. 導入:なぜ“複数店舗採用”はコストが膨らみやすいのか
- 一斉配信の副作用
複数店舗を横断する採用SNSで同じ情報を一斉配信すると、不要情報の露出が増え、ブロックや離脱を招きます。関東志望者に関西求人、介護職志望者に看護職情報——いずれも“ノイズ”です。 - 歩留まりの悪化
ミスマッチ応募が増えると、書類選考・面談のスクリーニング工数が肥大化。現場巻き取りも増え、結果として採用単価(CPA)が上がります。
用語メモ:CPA(Cost Per Acquisition)=1名採用に要した総コスト。媒体費+人件費+ツール費などの合計を採用人数で割る。 - 最短距離の解決策
カギは**「属性把握(誰に)」×「配信最適化(何を・いつ)」**。初回で候補者の希望を取り、以降は必要な情報だけを届ける流れをつくることです。
2. 事例の概要:チャームケアコーポレーションのLINE採用
- 導線設計
採用サイトからいきなり応募させるのではなく、**「まずはLINE登録」**へ誘導。候補者と継続接点を持ち、タイミングが来たら応募へ滑らかにつなげる考え方。 - 初回アンケート
友だち追加後に氏名/電話番号/希望エリア/希望職種/保有資格などをチェックボックスやプルダウンで収集。これが後段の配信精度を左右する“共通鍵”になります。 - LINE拡張ツールの活用
用語メモ:LINE拡張ツール は、公式アカウントにタグ自動付与、分岐シナリオ、セグメント配信などのマーケ機能を加える外部サービスの総称(例:Lメッセージ、Lステップ)。運用の自動化と配信精度の両立が可能。
3. 設計の肝①:初回アンケートで“配信の無駄打ち”をゼロへ
- 最初に聞くべき4点(必須)
- 希望エリア(都道府県→市区レベルまで)
- 希望職種(介護職/看護職/本部職 など)
- 雇用形態(正社員/パート・アルバイト)
- 連絡手段(電話可否/コア時間)
- UIの工夫
入力は選択式中心で摩擦を最小化。自由記述は最後に1問のみ(例:「気になる点」)。 - セグメントの骨格
エリア × 職種 × 雇用形態 × 資格有無をタグで保持。配信は最小公倍数のまとまり(例:大阪市内×介護職×正社員)で作ると、量産しやすく運用が崩れにくい。
4. 設計の肝②:リッチメニューで「自己解決」させる
- リッチメニュー
用語メモ:リッチメニュー は、トーク画面下部に常駐する6〜8枠の大型メニュー。主要導線を集約し、問い合わせを減らす。 - 推奨構成(6枠例)
- 求人を見る:エリア別一覧(首都圏/近畿圏など)
- 動画で理解:仕事内容・先輩インタビュー・1日の流れ
- よくある質問:ボタンで分岐し自己解決
- 応募の流れ:選考フロー・必要書類・所要時間
- 壁紙・特典:軽いインセンティブで関心維持
- 登録情報の変更:希望エリア・職種などを自分で更新
- 個別DMを受けない理由
1対1対応は属人化と運用負荷を招きます。FAQ・動画・フォームで8割を自己解決に寄せ、残り2割のみフォーム経由で集約対応がベスト。
5. 設計の肝③:タグ自動付与とセグメント配信
- タグの自動化
ボタンタップやアンケ回答で自動タグ付与。たとえば「大阪市内」「介護職」「正社員」「初回未応募」など。 - 配信例
- 新着求人(エリア限定):「大阪市内タグ」にだけ当日18時に配信
- 職種別ストーリー:介護職希望者にだけ“1日の流れ”動画を3回シリーズ
- 応募前フォロー:「未応募タグ」に7日目で“応募の流れ”+よくある質問
- 頻度設計の目安
定常:週1通、募集強化期:週2通まで。サイレント期間(例:連続未読14日で配信停止)を用意し、ブロック率上昇を防ぐ。
6. 運用シナリオ:応募までの“勝ち筋”
- 4段階ファネル
- 登録:LINE友だち追加+アンケ完了
- 理解:仕事理解(動画/FAQ)
- 興味:自分ゴト化(エリア×職種の求人カード)
- 応募:応募フォーム→面接日程確定
- 自動メッセージ例(雛形)
- D0(登録直後)
「ようこそ!まずは希望エリアと職種を教えてください(30秒)。あなたに合った求人のみお届けします。」 - D1(仕事理解)
「【1分動画】先輩の1日をのぞいてみる👀」+FAQ「未経験でも大丈夫?」 - D3(興味喚起・求人提示)
「【大阪市内×介護職×正社員】3件の新着が出ました」求人カード3枚 - D7(応募促進)
「応募は最短60秒。面接はオンライン可/履歴書不要(職種による)。」 - 応募後(面接確定)
「当日の持ち物・場所・服装チェックリスト」を自動送付
- D0(登録直後)
7. KPI設計:効果測定は“集客”ではなく“適合度”
- 主要指標
- 友だち登録率(採用サイト訪問→LINE登録)
- アンケート完了率(登録者→回答完了)
- セグ配信の開封率/クリック率
- 適合率(応募の希望エリア・職種一致率)
- 面接設定率/面接出席率
- 採用単価(CPA)
- 初期離職率(入社1〜3か月)
- ダッシュボードの見方
適合率 → 面接設定率 → 出席率 → 内定率 の直列ボトルネックを特定。たとえば適合率が低ければアンケ設計・タグ精度を、出席率が低ければ面接リマインド・場所案内の改善を優先。
8. コストが下がる理由:構造的な解説
- 不要配信の削減
無関係な人への配信を止める=ブロック率低下→アカウント健全性が上がり、到達率・開封率が改善。 - 適合応募の増加
募集要件に合う応募が増えると選考工数が激減。面談1件あたり時間も短縮し、人件費が下がる。 - 自己解決の強化
FAQ・動画・リッチメニューで問い合わせの一次対応を自動化。採用担当の**“人でしかできない作業”**に時間を再配分できる。
9. 導入ステップ:明日からできる実装チェックリスト
A. 採用サイト側
- ファーストビューに「まずはLINEで情報を受け取る」CTAボタン
- LINE登録のメリット3点(エリア限定求人/非公開枠/選考ガイド)
- 登録後の流れ(登録→情報選択→求人受信→応募)を簡易図で
B. 初回アンケート
- 必須:希望エリア/職種/雇用形態/連絡可否
- 任意:保有資格、入りたい勤務時間帯、入社希望時期
- UI:選択式>自由記述、所要30〜45秒
C. タグ設計
- エリア(都道府県→主要市区)
- 職種(介護/看護/本部 等)
- 雇用形態(正/パ)+資格(初任者研修 等)
- ステータス(未応募/応募済/面接設定済/内定)
D. リッチメニュー(6枠)
- 求人一覧(エリア別)
- 動画ギャラリー
- よくある質問
- 応募の流れ
- 壁紙・特典
- 登録情報の変更
E. 配信テンプレ(3本)
- 新着求人:「{エリア}×{職種}の新着{件数}件」+求人カード
- 理解促進:1分動画+FAQ2つ(未経験/シフト)
- 応募促進:応募の流れ+所要時間+オンライン面接可
F. 運用ルール
- 送信頻度は週1通(強化期は週2まで)
- 連続未読14日で“休眠タグ”→配信停止
- 週次でKPIレビュー&改善チケット化
10. リスク&注意点
- 個人情報の取り扱い
取得目的・保存期間・第三者提供の有無を同意文で明記。アクセス権限は最小限、退会時の削除手順を整備。 - 配信過多の回避
同一週で“新着・理解促進・応募促進”が重ならないよう配信カレンダーで管理。 - ブランド一貫性とガバナンス
店舗ごとの独自配信はテンプレと承認フローで統制。語調・画像・応募導線は全社共通ガイドで統一。
11. まとめ:複数店舗採用は「分けて届ける」が正解
- 一斉から精密へ: “広く”ではなく、“必要な人に必要な情報を深く”。
- 小さく始めて磨く: まずは1エリア×1職種で設計→効果を見て拡張。
- 仕組みで勝つ: 初回アンケ→タグ付け→セグ配信→自己解決。この“型”が運用コストとCPAを同時に下げます。
付録:すぐ使えるテンプレ
1) 初回アンケ導入文(登録直後)
「友だち追加ありがとうございます!あなたに合った求人だけをお届けするため、30秒アンケートにご協力ください。途中保存不要、選択式でサクッと終わります。」
2) 新着求人配信(エリア限定)
件名:{エリア}×{職種}の新着{件数}件
本文:本日公開の求人をまとめました。通勤時間・シフトの相性もチェックできます。
ボタン:①求人を見る ②応募の流れ ③質問を見る(FAQ)
3) 応募促進(未応募タグ向け)
件名:応募は最短60秒/オンライン面接OK
本文:履歴書不要(職種により異なる)、服装自由、当日の持ち物リスト付き。迷ったら「応募の流れ」をどうぞ。
4) 面接リマインド(前日18時)
「明日の面接は{時刻}、{場所/URL}です。5分前にアクセスをお願いします。持ち物:身分証/メモ。困ったらこのメッセージの“場所を開く”をタップ。」
最後に
「採用コストだけ増える」状態は、設計を一段細かく分けるだけで止められます。
もし「アンケ設計」や「タグ設計」「テンプレ整備」から手を付けたい場合は、この原稿のチェックリストをそのまま打ち合わせのToDoに落として、まずは1エリア×1職種で小さく始めてみてください。効果が見えたら、同じ型で他エリア・他職種へ水平展開するだけです。
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